黒十字、邪悪なり
…先程から、ずっと何かが聞こえていた。

風の音のような、唸り声のような。

「恐らく化け物どもの声だろう…ゾンビやグールは、呻き声のような不明瞭な言語を発するからな」

視線は前方から逸らさぬまま、マーフィが言う。

「…マーフィ大尉は、どう思われますか?要救助者は、まだ無事だと思いますか?」

ゾロターンカスタムを構えたまま、セシルが言う。

飛行中のヘリでさえ、蝙蝠化した吸血鬼によって撃墜させられた。

屋上にいた所で、彼らに襲撃されれば一溜まりもない。

武器を所持している怪異駆逐対策局の隊員でさえ太刀打ちできないのだ。

丸腰の一般市民など…。

「生存していようとどうだろうと」

マーフィの声は震えていた。

「俺達は任務を遂行するしかない」

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