黒十字、邪悪なり
「大人しく隅っこに蹲って震えていればいいものを…」

邪悪は棒立ちのまま言う。

「近所のお節介が、困っている人達を助けたい…なんてボランティア精神ぶら下げて死地に飛び込むから、怖い思いをしなきゃならなくなる…お前達如きが、この街の状況を引っ繰り返せるとでも思ったか?」

「ふ、ふざけないで!」

今でもガクガクと震える膝に喝を入れ、セシルは叫んだ。

「この街をこんな地獄に変えたのも、お前の仕業ね、邪悪!」

「さぁて…どうだったかな…地獄を作ったのは一度や二度じゃあないんでな…」

惚け、はぐらかし、邪悪はセシルの神経を逆撫でする。

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