黒十字、邪悪なり
「こんな狭い通路で、そんな馬鹿でかいイチモツが振り回せるわきゃねぇだろうが、馬鹿が」

言うなり、インバネスコートの内側から抜いたサルガタナスの銃口を、セシルの額に押し付ける邪悪。

冷たい金属の感触が、セシルに伝わる。

それだけで、体温が2度3度と低下するようだった。

体の震えは尚も止まらない。

このまま邪悪が少しでもトリガーに力を込めれば、まるで炸裂徹甲弾のようなサルガタナスの弾丸が火を噴く。

この拳銃によって殺された仲間は、これまで数え切れないほど見てきた。

拳大の風穴を胴体に開けられ、頭が柘榴のように砕け散り、掠めただけでも骨が露出するほど肉をこそぎ取る。

血が濁流のように流れ落ち、掠り傷でも致命傷だった。

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