黒十字、邪悪なり
半ば引き摺られるように立ち上がったセシル。

「走るんだ!走れ!」

マーフィが遮二無二セシルの腕を引っ張る。

その背後で。

「!?」

早くも邪悪が立ち上がる気配があった。

胸から滴り落ちる血を意にも介さず、真っ直ぐにセシルとマーフィを見つける邪悪。

「やるじゃあないか、人間。一撃食らって死んだふりして、絶望をやり過ごす事に必死になっているかと思ったがな…いいぞ、いい…非常にいいぞお前…そのお嬢ちゃん同様、無駄に足掻いて、どうせ死ぬのに見苦しくみっともなく生き汚く抵抗する…俺の好みの人間だ…」

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