黒十字、邪悪なり
目を合わせるな
マーフィの血が、跪いたセシルの足元にまで流れてくる。

血の生温かさを感じながら、彼女はマーフィの感じた絶望を伝染されたかのようだった。

…彼は、もう耐えられなかったのだ。

約46万人が死に、アンデッドへと変貌した地獄。

それでもまだ助けを求める人がいて、それらを救出する事が、正気を保っていられる心の拠り所だった。

地獄で精神を保っていられる、唯一の希望だった。

自分がしっかりしなければ、生き残った人達は助けられない。

そう自身に言い聞かせ、必死に正常さにしがみ付いていたのだろう。

目の前でベナルが、その要救助者でディナーを愉しんでいる、その光景を見るまでは。

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