黒十字、邪悪なり
「もう一度訊くぞ?」

邪悪は嗤っていた。

これ以上ないというほど可笑しげに。

「貴様はどうするんだ、お嬢ちゃん?」

「……」

どうもこうも。

どうしようもないだろう。

この都市に、もう人間はセシル一人しかいない。

目の前には不死の王。

傍らには邪悪。

人間の、女の身のセシル一人で、一体どうしろというのか。

もう死ぬしかない。

殺されるのを待つしかない。

断頭台の前に立ち、斬首を待つ罪人のようなものだ。

最早希望などない。

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