黒十字、邪悪なり
「そんな貴様に耳寄りな話がある」

邪悪が、そんな事を言ったような気がした。

「死ぬのは嫌か?ベナルに臓腑まで食い散らかされてアンデッドになるのは嫌か?貴様のお仲間のように、頭をぶち抜いて無様に屍を晒すのは嫌か?」

嫌だ。

どの選択肢も選べない。

生きていたい。

死にたくないに決まっている。

弱くて、脆弱で、惰弱で、貧弱な人間だもの。

死にたくないに決まっている。

「ならば俺の眷属となれ」

邪悪は言った。

「俺に屈服し、勝てないと負けを認め、二度と逆らわぬ、自身が負け犬であると認めろ」

「……」

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