黒十字、邪悪なり
それは、悪魔の囁きだった。

人間の尊厳も、矜持も、全て破壊する甘美な誘惑。

それを認めた瞬間、セシル・カイルという人間は全て崩壊する。

彼女は黒十字 邪悪という化け物に陥落する事になる。

身も心も、邪悪の奴隷に成り下がる。

烙印を刻まれ、魂を売る事になる。

眷属とは、軍門に下るとはそういう事。

「口にするのは悍ましかろう、貴様は脆弱な人間だからな」

くつくつと笑う邪悪。

「何、屈服を誓えなどと無慈悲な事は言わん。その顔を上げ、俺と視線を交わせ。俺の眼を見ろ。それだけで全てが解決する。貴様の抱える不安も、絶望も、恐怖も、何もかもが払拭される」

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