黒十字、邪悪なり
発射された。

弾倉は既に空っぽになっているにもかかわらず、30ミリ弾が撃ち放たれた。

穴だらけになっているベナルの肉体に、更に命中する砲弾。

「驚く事はない。俺のサルガタナスやネヴィロスと同じ原理だ」

邪悪が言う。

「今の貴様はこの俺の眷属…吸血鬼の真祖の能力を持っている。太陽の下を出歩き、十字架や聖水さえも物ともしない、一端の化け物だ。魔力で空弾倉の火器に弾丸を精製するくらい造作もない」

「……」

『一端の化け物』

嘗ての自分ならば、更なる絶望の深淵に追い込まれる言葉。

それなのに昂揚した。

化け物になった事。

吸血鬼の真祖クラスの高位の化け物になった事。

その事に、快感すら覚えた。

身も心も化け物に成り下がった。

その事に違和感は感じても、不快感は一切感じなかった。

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