黒十字、邪悪なり
「ならばセシル・カイル。そのままベナルを牽制。砲撃を続行してベナルを足止めしろ」

「 Yes, sir!」

邪悪の命令に、セシルは答える。

「俺は」

セシルに背を向け、邪悪は屋上の端へと歩いて行く。

眼下には、地獄絵図。

地上102メートルの下には、化け物どもが渦を巻いている。

ゾンビ、グール、ヴァンパイア。

不死の化け物どもの大群衆。

肉を、血を求め、今尚進撃を続ける軍勢。

既にこの都市の生者は、全て亡者となり尽くした。

それでも彼らは歩みを止める事なく、隣の街へ、更に隣の街へ、更にそのまた隣の街へ。

街へ、街へ、街へ。

やがてはこの国の全てを同胞へと変える。

何れは世界中の人間をベナルの眷属へと変える。

だから、そうなる前に。

「こいつら亡者どもの後始末をする」

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