黒十字、邪悪なり
しばしの無言。

凍り付いた空気のまま、両者は対峙する。

張り詰めた空間。

血と腐敗の臭いが混ざった風が吹き抜ける。

この戦慄した空気の中で、震えているのはセシルのみ。

邪悪もベナルも、薄笑みすら浮かべて互いを真っ直ぐに見ている。

この殺伐とした緊張感を、寧ろ愉しんでいるようだった。

嵐の前の静けさとはこの事か。

一瞬にして、この場は阿鼻叫喚の殺戮の場と化す。

邪悪かベナルか。

どちらかが動けば、すぐさま地獄の続きが始まる。

< 176 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop