黒十字、邪悪なり
「う、撃て!撃て!」

口元から咥え煙草がポトリと落ちた。

恐怖に駆られ、部隊長は命令を発する。

同時に恐怖は伝染したのか。

隊員達は手にした自動小銃を構え、発砲する!

吐き出される神聖弾丸。

既にボロ雑巾同然だった邪悪の肉体が、一斉掃射で更に蜂の巣にされていく。

邪悪一人相手に、一体何百発の神聖弾丸を使用するのか。

これだけ撃てば、ゾンビの百や二百は駆逐できる筈だ。

だが、厚生労働省の税金の無駄遣いと批判されようとも、発砲をやめる事は出来なかった。

何故なら、これだけの一斉掃射を浴びても邪悪は息絶えず、それどころか弾丸の雨の中で、どんどん肉体が再生し始めているのだ。

千切れた手足も、風穴の開いた胴体も、身に付けていたインバネスコートさえ、傷一つない状態に再生している。

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