黒十字、邪悪なり
ヨセフの言葉を理解したかのように、ヨロヨロと暗がりの奥へと歩いていくゾンビ。

しかしゾンビは一体だけではない。

久し振りに新鮮な肉と臓物を貪れると、闇の中から複数のゾンビ達が這いずり出て来る。

強くなる饐えた臭い。

「…伝言役は一体だけでいい…貴様らには用はない」

人ならざる異形の化け物達に取り囲まれても、些かも動揺せず。

ヨセフの纏う修道服、その袖口から、数十本の銀の鍼が出て来る!

「我らが神は、貴様ら死して後、化け物の眷属になった命にも優しい」

そんな言葉と共に、一斉に鍼を投擲するヨセフ!

次々と鍼がゾンビ達の頭部に突き刺さる。

先程のゾンビのように、脳に刺激を与えるなどという繊細な作業ではない。

化け物としての生存活動を停止する為の、明確な殺害の為の鍼の一撃だった。

< 199 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop