黒十字、邪悪なり
アヘンやヘロインを売る屋台が並んでいる区画。

屋台の持ち主達が、修道服を纏ったヨセフを奇異の目で見る。

確かに麻薬と聖職者、あまりに遠い関係だ。

薄暗い通路とはいえ、意外と人は多い。

九龍都市には約3ヘクタールの敷地に5万人もの人が住んでいる。

1平方キロメートルあたりの人口密度に直せば約160万人。

畳一枚分の土地に5人が暮らすという超過密エリアだ。

尤も、住んでいるのは『人』ばかりではないが。

下層部には人間が多いものの、上層階に行けば人口密度が少なくなる代わりに、強力な化け物が棲みついている。

一部の者しか知らないが、この九龍都市の本当の支配層は化け物だ。

高位の化け物が、上層階のフロアを丸ごと個人で占有している為、下層部は人口密度が増えざるを得ないのだ。

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