黒十字、邪悪なり
そんな過密エリアの下層部通路。

頭上にはホースや電線が垂れ下がっている。

建物と建物の間に隙間がないので、水道管や下水管、電線や電話線、テレビの共同ケーブルはこうやって配線するしかない。

ホースの間には上の階の住民が投げ捨てたゴミが大量に挟まっている。

下水管が壊れても修理できない為、汚水がボタボタ降り注いで通行不能の通路もある。

そんな通路の先に、『彼女』はいた。

身の丈よりも長尺な砲を携えた、金髪の若い女性。

彼女はオズオズと言う。

「あの…貴方がヨセフさん…ですか?」

「……そうだが」

この九龍都市の住人とは思えぬほど、小奇麗で垢抜けた女性だ。

そんな印象を受ける彼女は。

「ヨセフっていうから外国人の方かと思っていたら…黒髪、黒い瞳…日本人なんですね。ヨセフというのは洗礼名…化け物に本名を知られ、呪いや魔術に利用されないようにする為の名ですか?」

人懐っこく言った。

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