黒十字、邪悪なり
潰れた頭が、心臓が、ヨセフの見ている前で瞬時に再生する。

致命傷が致命傷にならない。

まるで意に介していない。

愕然とするヨセフに対し。

「ぬぅうぅぅうぅぅんっ!」

ベナルは左肩に備えた肩当代わりのギロチンの刃で体当たり!

嘗てマリー・アントワネットの処刑に使用されたというギロチンを作り直した曰く付きの逸品。

刃そのものに彼女の強力な怨嗟が籠っているという。

いまや魔術品としても通用する逸品だ。

そんなもので体当たりされながら、吹き飛ばされ、壁に叩き付けられる程度で済んだのは、ヨセフの身に宗教防壁…いわゆる神の加護があったからだ。

それでもヨセフは喀血し、全身の痛みに呻く。

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