黒十字、邪悪なり
それにしても、下りの階段を下り続けたというのに、どうして屋上に辿り着いたのか。

九龍都市外部の人間であるヨセフには、理解し難い構造だ。

セシルが言うには、この九龍都市の一部の建物は、屋上伝いに通らなければ辿り着けないものもあるのだという。

考え無しに違法建築を繰り返した結果といった所か。

一歩踏み出すと。

「っ…」

汚水がボタボタ滴っていて、通路はヌルヌルとぬめついていた。

気持ち悪いし、臭い。

流石に顔に嫌悪感が滲み出る。

しかし気を取り直し、進む。

屋上に出れば、建物内の澱んだ臭気よりも幾分マシな空気が流れていた。

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