黒十字、邪悪なり
「黙れっっっっっっ!」

癇に障るその赤い眼を鍼で潰してやろうとして。

「うぐあ!」

ヨセフは逆に飛びついて来た邪悪によって右肩に食らいつかれた!

食い込む邪悪の鋭い牙。

まるで吸血鬼だ。

血を啜り、骨まで食んで噛み砕こうとしている。

強引に邪悪を引き剥がし、ヨセフは彼を床に叩き付けた。

「何だ祓魔師、聖水臭い聖職者の割に、なかなか美味い血と肉じゃないか…もう一口食わせてみろよ、なぁ?」

「化け物がっっっ!」

悔し紛れに吐き捨てつつ、ヨセフは肩の傷を庇った。

圧倒的有利だというのに、ここまで追い詰めていながら殺せないとは。

家族の仇を討つ事が出来ないとは!

ヨセフの顔に、悔しさが滲む。

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