黒十字、邪悪なり
体の芯にまで響くような、凄まじい衝撃。

鈍器で殴られた程度の衝撃ではない。

まるで重機に衝突されたような。

或いはビルの屋上から転落して地面に叩きつけられたような。

殴打とは思えないダメージに、ヨセフは崩れ落ち、嘔吐し、悶絶する。

彼の肉体は宗教防壁…いわゆる『神の加護』によって守られている。

並大抵の化け物の攻撃では、触れる事すら叶わないような強力な障壁だ。

この宗教防壁があるからこそ、ヨセフは高位の化け物とも互角以上に戦う事が出来る。

しかし邪悪は、その宗教防壁を貫通してヨセフを殴った。

ダメージの半分も緩和できていない。

…いや、それでも何割か緩和できているからこそ、ヨセフはこの程度で済んだのだろう。

邪悪と違い、ヨセフには再生能力などない。

もし緩和されないままのダメージを受けていたら…。

想像するだに恐ろしい。

< 265 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop