黒十字、邪悪なり
「立てよ、蹲ってるな、祓魔師」

蟲でも見るような眼で、邪悪はヨセフを見下す。

「まさか一撃でハイお終いなんて事はないよな?もう内臓がぐちゃぐちゃか?骨が砕けたか?出血が止まらないか?ならば」

邪悪は声を荒げた。

「内臓を再生させろ!骨を修復しろ!流血を止め、ダメージをゼロに戻せ!化け物なんて超常の存在に喧嘩を売ってるんだ!その程度できるんだろう?その程度できるからこそ喧嘩売って来たんだろう?なぁ?」

「っっっっ…」

委縮する。

何とか強がりを口にして、闘争心を燃やそうとするが、ヨセフの身は裏腹に縮み上がる。

恐ろしい。

心底、この化け物が恐ろしい。

人間にさえ己と同じ禍々しい能力を要求する、この黒十字 邪悪という化け物が、心の底から恐ろしかった。

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