黒十字、邪悪なり
そんなヨセフの心中を察したのか。

「……」

チッ、と。

邪悪は微かに舌打ちする。

「できないのか。再生も、修復も、回復もできないのか。脆弱で、惰弱で、弱々しい人間め。その程度の力で、生意気にもこの俺に喧嘩を売って来たのか」

ザワザワと。

邪悪の黒い長髪が逆立っていく。

額に血管が浮き上がり、紅い眼が更に血走る。

「貧弱な人間。随分と大層な真似をしてくれたな。この俺の期待を裏切ってくれたな。この代償は高くつくぞ」

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