黒十字、邪悪なり
己の眷属にさえ、容赦なく凶弾を叩き込む外道。

人の情けすら理解できぬ鬼畜の極み。

そんな邪悪のやり取りを見ながら。

「……」

ヨセフは懐から、二本の鍼を取り出していた。

正確には鍼ではない。

鍼にしては太すぎるし、鍼にしては鋭すぎる。

その鋭利な、カトリックが使うにしては余りにも攻撃的な聖性に気付き、邪悪はゆっくりと振り向く。

「ほぉ…」

その口元が、愉悦に歪んだ。

「人が悪いな祓魔師…まだいいものを隠し持っていたんじゃないか」

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