黒十字、邪悪なり
「聖釘(せいてい)」

ヨセフは呟く。

聖遺物のひとつで、イエス・キリストが磔にされた際に手足に打ちつけられた釘であるとキリスト教内で言い伝えられているもの。

伝えられるところによれば328年頃、コンスタンティヌス1世の母親ヘレナがゴルゴダの丘の跡地、現在の聖墳墓教会付近で聖十字架とともに発見したとされる。

信仰の対象として各地のカトリック教会で祭られている。

カトリック百科事典によれば、世界中で祭られている聖釘は30本を下らないだろうと言われる。

中でも最も有名なのは、いわゆる聖槍の中央部に針金で固定されていたものである。

ヨセフが手にしている二本の聖釘は、その聖槍の中央部に針金で固定されていたものを加工し直し、武器として使用できるようにしたもの。

ヨセフの真の切り札だった。

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