黒十字、邪悪なり
神の子が受肉して人となった、真の神であり真の人である救い主、イエス・キリスト。

その血を浴びた聖釘は、ロンギヌスの槍や聖骸布と並び、究極の聖遺物として数えられる。

その聖性は、法儀式済弾丸や銀製武器の比ではなく、或いは聖剣や神剣にさえ匹敵する。

化け物を滅殺するのに、これ以上のものは存在しない。

「……」

薄笑みを浮かべていた邪悪の顔が、強張る。

笑みこそ消えてはいないものの、余裕は僅かに陰りがさしていた。

それ即ち、『警戒』のあらわれ。

祓魔師とはいえ、ただの人間であるヨセフに対し、邪悪が警戒しているのだ。

確信する。

邪悪に、この聖釘は通用する!

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