黒十字、邪悪なり
「救世主や英雄など興味はない」

邪悪以上に呼吸を荒げたまま、ヨセフは言った。

既に体力は限界に近い。

如何に邪悪にダメージを与えられる聖釘を持っていようと、彼自身は人の身なのだ。

祓魔師として修練を積み、鍛え上げているものの、人間としての限界はある。

人間を遥かに超越した化け物達に敵うものではない。

だがそんな彼を支えているのは。

「俺は貴様に、家族の復讐を果たすだけだ!」

そう、復讐心。

寝ても覚めても仇を討つ事だけに執着し、憎悪を燃やし続けていた事だけが、ヨセフの人の限界を超え、精神だけでここまで邪悪に肉薄させているのだ。

「いいぞ人間!」

邪悪もまた、二挺拳銃の銃口を向けた。

「脆弱な人間の身で、化け物たる俺を超えるか?超えられるか?超えてみせろ!」

邪悪とヨセフ、満身創痍の二人は間合いを詰め。

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