黒十字、邪悪なり
背後から、ヨセフの体は手鉤によって貫かれた。

「ぐふっ…!」

ヨセフの口から溢れ出す血。

力なく跪き、うつ伏せに倒れる。

「らしくないじゃないか、ジャーク・ブラッククロス。人間相手に戯れが過ぎるんじゃないか?」

血の海に沈む祓魔師。

それを睥睨するのは、悍ましく醜い肉体を持つ不死の王だった。

「ベナル・ヨアキム・シュターセン…」

ギリリ、と。

鋭い犬歯を覗かせて歯噛みする邪悪。

「おや?」

二目と見る事の出来ない焼け爛れて腐敗した顔が、ニヤリと笑う。

「怒っているのか?ジャーク」

< 284 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop