黒十字、邪悪なり
だが。

「ここまで大風呂敷広げて、結局今回も決着ならずってのも面白くない」

邪悪はユラリと両手を広げた。

「ベナル、貴様との殺し合いも、長く生き続ける化け物として、それはそれで愉しくはあったが…正直飽きた。何より貴様は」

邪悪はチラリと、セシルが手当てし続けるヨセフの姿を見る。

「俺のお愉しみの邪魔をした。そいつは勘弁ならん」

「随分と人間風情にご執心だな、ジャーク」

ベナルは鼻を鳴らした。

「貴様の眷属になったあのお嬢ちゃんといい、祓魔師といい…地獄の大公爵である貴様が、寿命短く脆弱な人間如きに、何故そうも拘る?やはり堕天使になる前の感情が残っているのか?人間を守るなんていう、天使だった頃の虫唾の走る感情が」

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