黒十字、邪悪なり
「それにしてもよぉ」

屈強そうな海兵隊員の一人が、小柄なセシルを見下ろして言う。

「何でセシルは海兵隊に入隊したんだ?やっぱかのカルロス・ハスコックが言ったアメリカ海兵隊の狙撃手の代名詞として残る"One shot, One kill(一撃必殺)"に憧れてか?」

「ううん」

その問いかけに、セシルは首を横に振った。

「海兵隊に入隊する前に、映画を見てね、その映画で海兵隊の教練指導官が言ってたの」

彼女は眉間に皺を寄せ、声真似をした。

「チャールズ・ホイットマンは500ヤードの距離で柱の陰の男(地元警察の警官)を撃ち抜いた。あいつはどこで射撃を習った?勿論海兵隊だ!ってね」

「おいおい!チャールズ・ホイットマンはテキサスタワー乱射事件の犯人じゃねぇか!」

「えっ、そうなのっ?」

「殺人犯に憧れちゃいけねぇぜ、セシル兵曹長!」

セシルの周囲で笑いが起きる。

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