黒十字、邪悪なり
「貴様が言えた義理かよ」

ベナルもまた、醜悪な顔を歪めて笑う。

「あれから貴様、何人殺した?人間、ゾンビ、グール、吸血鬼…人と化け物の区別なく、一体幾つの命を奪った?この世の全てを敵に回し、一体何人の命を屠った?」

「俺の敵でないのは、動かなくなった死体だけだ」

アッサリと言ってのける邪悪。

その言葉に。

「ぬぁぁあぁぁあぁぁあぁあぁっ!」

ベナルは殴った!

肉体に突き刺さったままだった拘束の痕跡…手首にぶら下がっていた太く錆び付いた鎖を振り回して、鞭のように邪悪の顔面に叩き付ける!

強烈な鎖での打撃を受け、転倒する邪悪。

そんな邪悪を見ながら。

「羨ましい奴め!」

ベナルは言った。

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