黒十字、邪悪なり
ベナルの頭部の上半分が、射撃の破壊力で欠損した所で。

「フン」

邪悪は彼の体を蹴り倒した。

ドチャッ、と。

血に湿った肉の音を立てて転がるベナルの体。

即死だ。

普通の人間ならば。

だが、この男が死ぬ筈がないのは、邪悪が誰よりも知っている。

バグラチオン作戦の際に相対した時には、もっと徹底的にベナルの肉体を破壊してやった。

にもかかわらず、彼はこうして蘇生し、邪悪の前に再び姿を現した。

肉片の一欠片、毛筋一本、血の一滴、焼かれても灰が僅かでも残っていれば肉体が再生するほどの不死ぶりを持ち、一時的に活動を封じる事しかできない。

それが不死の王(デミリッチ)が不死の王たる所以だった。

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