黒十字、邪悪なり
「何を絶望してやがる」

少女を嘲笑う邪悪。

…雲に隠れていた満月が顔を出し、窓に打ち付けられた板の隙間から、少女の顔を照らし出す。

その顔は醜く爛れ、頬の肉は腐り落ち、片目は刳り貫かれて空洞になっていた。

肌は血の気が失せて青白く、瞳孔は開き切っている。

その身から漂うのは腐臭。

少女は既に人に非ず。

生ける屍、ゾンビだった。

「とうの昔に死んだ奴が、絶望なんてしてんじゃねぇ」

< 8 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop