生まれ変わりのスターチス

出会いは桜の樹の下で



静かな道沿いをゆったりとした速度で走るバスの振動を感じながらゆっくりと視線を窓の外にずらす。


都会から随分と離れたこの場所で私は新しい生活を始めようとしている。


「…お母さん達も来れたら良かったのにな」


ポロリと出てくる本音についついため息をついてしまう自分に首を振る。


お父さんの転勤の為、海外に行くことが決まってしまった私の家族。



でも私はまだ学生で更に言えば中学はあまり学校に行っていなかった。言うなれば多分引きこもり、と言うのだろう。


だからお母さん達はせめて高校だけでも行って欲しい、そう言われ海外に行かず祖母が暮らす穏やかな町へと引っ越すことが決まったのだ。


最初は家族から離れた暮らすことに戸惑いがなかったわけでもなかった。



それでも私の為にお金を貯めて私の為に働いて来た二人の姿を見ていれば、高校には行きたくなってしまう。


それにずっと離れ離れになるわけじゃない。


大きな休みが取れなら帰ってくると言っていたからきっと大丈夫。


ゆっくりと深呼吸をしてのんびりと窓の外を眺めることにする。



.
< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop