生まれ変わりのスターチス
「次は、桜の原町…桜の原町です」
バス内に広がる声に意識がしっかりし始めて慌ててボタンを押した。
危ない、折角の引っ越して来たのにこのまま通り過ぎる所だった。
「…あの、ありがとうございました」
小さくお礼を言って少し早めにバスの外に出る。どうも人と話すのは苦手で緊張してしまう為にこんな些細なことでも出来なくなってしまう。
いい加減この引っ込み思案を直さなきゃいけない筈なのに、高校入ってもこの調子だったら友達出来ないかも。
ネガティヴな思考を振り払う様に頭を横に振りながら、バスを見送りながら周りを見渡す。
静かところ、自然がいっぱいで今は春だからちょうど桜が満開な時期だ。
「えっと…春お婆ちゃんの家は…この坂を登って…」
お母さんから持たされた地図、更にもし本当に分からなくなった場合の交番の位置まで…お母さんの優しさに感動しながら坂を上っていく。
実際私は外は春お婆ちゃんに会ったことがあるのは数回しかない、それでも優しいってことだけは覚えてる。
お婆ちゃんは一人暮らし、周りに友人は居ても家では一人だと聞いていた。
でもそれも今日で終わり。
お婆ちゃんと私の二人暮しが始まるんだから。
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