生まれ変わりのスターチス


登っては曲がって登って曲がって、
それを数回繰り返していると見慣れた景色が私の視界に広がる。


「…あった、目印の大きな木」


小さい頃に来た時にこの大きな木の場所まで来れれば大丈夫、そうお婆ちゃんから教わったのを思い出した。


何を隠そう、この大きな木はお婆ちゃんの所有物なのだ。更に言えばこの大きな木からお婆ちゃんの家の敷地と言っても過言じゃない。


私はこの大きな木の側から見える町の景色を見ることが密かな楽しみなのだ。
こんなに綺麗で壮大な景色は滅多にお目にかかれるものじゃない。


「…なんて、私が力説しても意味ないよね」


周りから見たらバカらしく見えるかもしれない、こんなことで胸を張って何になると言うんだ。


でも…それだけど、この景色は綺麗だ。
そうだ、初めて出来た友達にこの景色を真っ先に見せよう。


楽しみが一つ、増えた。

他人から見たらちっぽけなことかもしれないけど、それでもこの景色を共存できる…そんな友達が私は欲しい。


「そうだ、折角来たんだし登ってみようかな」


持っていた荷物を根元辺りに置いて着ていた薄手の上着の袖を捲り、木の幹に手を当てる。

小さい頃に来た時には登れたから多分今でもきっと登れる筈だと思う。
引きこもりで体力が少なくなったかもだけど、木を登るくらいならできる筈。


そして太い枝に足をかけそのまま体重を移動させようとする。



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