恋の治療は腕の中で
医院長の魂胆
藤堂先生のアシスタントについて1ヶ月程たったけど、患者さんに対して凄く優しいことがわかった。
元々顔が良いくせに、優しく語りかけるもんだから最近、先生ご指名で来院してくる若い女性患者さんが増えた。
銀座という場所がら若い女性が多い街だ。女性患者さんが増えてクチコミで更に患者さんが増えてくれればこの病院にとってはとてもプラスなことだ。
てっきり鼻の下でも伸ばしながら診察でもするのかと思っていたら以外なことに先生は、誰にでも同じように接していた。
ちょっと見直したかも。
でも、
私達スタッフに対する態度は最悪だ。
いつも冷たい声で上からモノを言う、あの態度はないんじゃない。
最近は言われなくなったけど始めの2.3日は、ちょっと器具出しが遅れただけでも
「望月さん。 何モタモタやってんの。」
すみませんね。何しろ今まで医院長のアシだったもので、すっかりスローテンポに慣れてしまっていたから。
この前なんて、私が他の患者さんのスケーリングをしている間、助手の子が藤堂先生に付いたら。
器具出しが遅いからバキュームがなってないまで。挙げ句に、そんなことも出来ないのか。
なんてことまで。
おちおちスケーリングも出来やしない。
でも、私がスケーリングを終えて最終チェックをした後は、決まって「流石だね。」なんて笑顔で誉めてくれる。
ドキッ!
えっ?俺様ドクターに『ドキッ!』って何よ。ありえないでしょう。自分で自分に突っ込みを入れてしまう。
それでもだいたいの子はダメ出しばかりだから、何度か泣かされてそれ以来補助についてくれる子はいなくなった。
心奈以外わね。
見た目は、今時のギャルっぽい心奈だけどやることはきちんとやる子なのよね。
しかも、どれだけ言われてもとにかくめげない。そんな心奈を私は大好きだ。
でも、最初こそなんて傲慢なんだ。って思ってたけど、患者さんの前では決して叱らない。必ず患者さんが帰った後で叱る。
ちょっとは、いいとこあるじゃない。