恋の治療は腕の中で
ガチャ

玄関のドアを開けると部屋中が甘い匂いで満たされていた。その香りは決して嫌みではなく私の心にスーっと入ってきた。

何の香りだろう?

リビングに入いると部屋中に色とりどりの大輪の花があちこちに飾られていた。



「うわー。凄く綺麗。

でも悠文、このお花は?」

「あ~、これはダリアって言う花なんだ。」

「ダリア。」

私は今まで見たこともないような青や紫のダリアの花に見とれてると、


「お姫様どうぞ。」

悠文は優しく微笑みながら私の手をとってダイニングチェアに座らせてくれた。

ダイニングの上には食事が用意されていた。

悠文が照れながら

「こんなに腕を振るったの久しぶりだから美味しいといいんだけど。」


まさかこれって悠文が作ったの!?


テーブルに並べられた料理は、パン、サラダ、……ん?メインディッシュは?


するといつの間にかエプロンを着けた悠文がフライパンをフランベし始めた。

「こちらは神戸牛のサーロインステーキでございます。」

料理も美味しそうだけど、それ以上に悠文が格好良すぎて目眩を起こしそうになる。


「凄いね悠文。お店って言うからビックリしちゃった。

でも悠文の作ってくれた料理の方が断然美味しい。」

「そう言って貰えると頑張った甲斐があったよ。」


「でもいつの間にこんなに用意したの?」

そう、それが不思議だった。だって今日は車だったから一緒に家をでたし用意する時間なんてなかったんじゃ。

「あー、昼休みに戻ってやった。」

悠文は、少し照れて顔を赤くしながら言った。


「そうだったの?」


うわー、全然知らなかった。

「ありがとう。本当に凄く嬉しい。」


料理はどれも悠文の優しさと愛情がこもっていて本当に美味しかった。


「今まで食べたどんなお料理より美味しい。」


「紗和は、大袈裟だな。」
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