恋の治療は腕の中で
医院長は、何故か満足そうにうなずきながら


「そうか、そうか。

さすが、紗和ちゃん。

いやぁー、藤堂先生もさわちゃんの事、よく誉めてるんだよ。」


うそっ、藤堂先生が。


「またまた医院長ったら。藤堂先生に限ってそれはないんじゃないですか?」

私は笑って切り返すと、


「ほんとだよ。

この前も紗和ちゃんのスケーリングは凄いって。

『僕にはあそこまで丁寧に出来ないですね。』

って言ってたよ。」


「はあー、

ありがとうございます。」


なんだか藤堂先生に誉められたなんて聞くとくすぐったい感じ。



メインの肉料理が運ばれてきた。


何この柔らかさ、美味し過ぎるよ。


私がお肉に心を奪われてると


「僕も歳だから、最近これからこの病院をどうするか真剣に考えてるんだよ。

ほらっ、僕には子供がいないからさ。

藤堂先生は、僕が大学病院にいた時の最後の教え子なんだけど。

彼の腕と患者さんに対する考え方に惚れ込んで無理矢理この病院に来てもらったんだ。」


まだまだ医院長は若いと思うけど、私が思ってる以上にドクターって仕事は大変なのかもしれない。

藤堂先生と仕事をしてみて医院長の言ってる事がわかる気がする。
患者さんには優しいドクター。

本当はスタッフになんか優しくしなくても患者さんにさえ思いやりを持って治療にあたってくれればそれでいいのよね。


あー、この付け合わせの温野菜も美味しい。確か有機野菜って書いてあったよな?


「それでね。藤堂先生にいずれは、この病院を任せようと思ってるんだ。

もちろん、紗和ちゃんと一緒にね。」



「そうなんですかー。

…………………………。」





ちょっちょっと、今何て言いました?



「医院長?」

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