恋の治療は腕の中で
手術から2週間後医院長は無事退院した。


「いやー、藤堂先生や紗和ちゃんには本当に心配かけたね。」


退院してからも暫くは自宅で療養する医院長の所に私達はきていた。


「本当にあんまり心配させないで下さい。」


「藤堂先生も手厳しいなぁー。」


「狭山さんがいたから良かったものの、一人だったら今頃ここにいないですよ。」


ちょっと悠文いくらなんでも言い過ぎじゃない!?


「ハッハッハ!

そうだよねー。本当に狭山くんには感謝してもしたり無いよ。」


「そんな私なんて……。」

狭山さん顔赤くなってなんか可愛い。


「分かってるなら医院長……。


まあ、これ以上は余計なお世話ですね。」


余計なお世話なのは分かってるけど、やっぱり私はほっとけない。


「医院長!

狭山さんのことどう思ってるんですか?」


「おい、紗和。

だからそれは……。」


「いや、いいんだよ。

紗和ちゃんのいう通りだよ。

僕はね、奥さんを亡くしてからずっと狭山くんに甘えていたんだよ。でも今回の事で良く分かったんだ。」




「狭山くん、いや恭子さん。こんな老いぼれの僕とこれから一緒に歩んでいって欲しい。」


「先生……。」


狭山さんは涙をボロボロ溢しながら何度も何度も頷いていた。


良かった。

私も一緒に思わず泣いてしまった。

でもこの涙は悲しい涙ではなく温かく嬉しい涙。
こんな涙ならなんどでも流したい。

それから直ぐに医院長と狭山さんいや、海老名夫人は婚姻届けにサインをした。勿論私達が保証人になって。


医院長は年だから披露宴みたいな派手な事はしたくないって言ったけど恭子さんは初婚だったので、半ば瑞季と私で強引に陵介さんのお店を貸し切って身内だけの披露宴をした。

「恭子さん幸せそうだったね。」

「あー。紗和と瑞季くんのおかげだな。」

「そんな私達はちょっとお手伝いしただけだよ。」


「紗和があのとき医院長に言わなきゃあの二人はきっと今も変わらなかっただろう。

でも本当にあの時は焦ったぜ。まさか直球勝負にでるなんて。」

「あの時はつい勢いで……。」


「まっ、そんな紗和だから俺は惚れたんだけどな。」


「次は俺達の番だな。」


悠文が耳元で急にそんなこと言ってきたか思わずビクッってなっちゃったじゃない。


「わりぃー、お前ここ感じるんだよな。」

チュッ


キャッそのまま耳にキスしてきた。

絶対わざとだ!
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