恋の治療は腕の中で
披露宴も終わり私達二人は医院長の自宅に呼ばれた。


「ごめんねー。わざわざ来てもらって。」


「いえ、いえ。

それよりどうですか?新婚生活は?」


「ハッハッハ!


藤堂先生年寄りをからかわないでくれよ。」


「でも、今回の事恭子さんも僕も二人には本当に感謝してるんだよ。」

医院長が私達に頭を下げてきたから私は慌てて


「そ、そんな。医院長止めてくださいよ。
私は医院長のこと本当のお父さんのように思ってるんですから幸せになってもらわなきゃ困るんです。」


「うんうん。紗和ちゃんありがとう。」


「わざわざお礼を言う為によんだんじゃないですよね。」


違うの?てっきりそうだと思ってた私はキョトンとしていたら医院長が急に真面目な顔になって。


「さすが藤堂先生。

僕、引退しようと思ってるんだ。」


引退……?


嘘!?だって先生は前より元気になるって言ってたじゃない。


「何でですか?」


「紗和ちゃん。ごめんね。

これから先何年生きるか分からないけどこの残された時間は恭子さんの為に使いたいんだ。」


「で、ても……。」


「直ぐにって訳じゃないよ。今いる僕の患者さんにちゃんと話をして納得してもらってからだよ。」


「紗和。医院長の気持ち分かってやれるよな?」

「うん。」

これから先恭子さんの為に生きるなんて医院長格好いい。

それが医院長の望みで二人が幸せになるならそれを反対しちゃダメだよね。

「分かりました。直ぐにじゃないし、引退しても海老名歯科医院であることに変わりはないんだからちょくちょく来て下さいね。」


「おいおい、それじゃあ引退したことにならないじゃないのかな?」


「それもそうですよね。」


へへへっ。

私は頭を掻きながら笑った。

「そこで、二人にお願いがあるんだけど。」


「なんですか?改まって。」

「僕の後あの病院を二人に引き継いで欲しいんだ。」

ん?

何か前にもそんな話し聞いたことが……。

あー!?フレンチレストラン!

あの時は、医院長のただの思いつきだと思って本気にしてなかった。


「いや、いや、無理ですよ。

悠文ならまだしも私もなんて……。」


「そんなことはないよ。僕は紗和ちゃんだから任せられるんだ。

勿論、藤堂先生の事も信頼してるけどね。」

「俺はついでですか。」

そんな言い方してるけど、悠文ちっとも嫌そうじゃないみたい。

「藤堂先生はどうだい?二人に任せてもいいかな?」

「はい。

医院長の後ですからどこまで出来るか分からないですけど、精一杯やらせていただきます。

紗和なら心配いりません。俺が認めた女ですから。」


はるふみ……。

「そうと決まったら二人にも早いとこ籍を入れてもらわなきゃ。」

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