恋の治療は腕の中で
「あのー、どこに行くんですか?」


恐る恐る聞いてみると、美しい顔を微笑ませて、


「ごめんなさいね。驚かせちゃって。

もうすぐ着くから。」


答えは教えてくれないらしい。


車は大きなお屋敷の大きな門の前で止まった。すると勝手に門が開きはじめる。


な、なに?何で勝手に門が開くの?
しかも何この大きなお屋敷。和風の作りをしたお屋敷ときっと四季折々に素敵な表情を見せてくれるのだろうと思わせる広いお庭があった。

もしかして隠れ家的料亭とか?よくお忍びで政治家が……とか言うあれかしら?


車はそのまま敷地内の駐車場に車を止めた。


「どうぞ。」


「は、はい。」

麗香さんに促されてお屋敷の中に入ると


「おかえりなさいませ。」

「ただいま。

こちら望月 紗和さん。

客間にお通ししてさしあげて。」


「はい、かしこまりました。

望月様こちらへどうぞ。」


私は一体何処へ連れていかれるの?

まさか、悠文を奪った私を監禁しようとかじゃないでしょうね。」


客間とやらに案内をされて中に入ると、何この広さ。

外観とは違い客間は一面絨毯張りに特注であろう長いソファーにローテーブル。

少し前の私ならこの部屋でゆうに生活できたな。

「こちらでお待ちください。」


余りの広さに落ち着かないでウロウロしていると


「お待たせしました。」


ロイヤルブルーに大柄のバラがプリントされたワンピースに白いカーディガンを羽織った麗香さんが部屋に入ってきた。


うわー。美人は何着ても絵になるなあー。

なんて感心していると。

「紗和さんって呼んでもいいかしら?」

そう言いながら右手でソファーを示しながら話しかけてきた。

ここに座れってことね。私は座りながら、

「はい、いいですけど。」

「わたくしのことは、麗香と呼んでくださいな。」


随分フレンドリーだけど、そうやって私を油断させるつもりじゃないでしょうね?

まだ疑いながら

「あのー、麗香さん。なんで私を此処に連れて来たんですか?

それに此処はどこなんですか?」

クスッ

「ごめんなさいね。

ここは、悠文さんの実家よ。」


えっ?悠文の?


うそ~~!

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