恋の治療は腕の中で
「本当に知らなかったのね。」


そりゃーそうでしょう。だって悠文は家族とは絶縁状態だって言ってるんだから連れて来るわけないじゃない。

ふーん。悠文はここで10才の時から育ったんだ。
いい思いでなんてないって言ってたけど、悠文を育ててくれた家だから来れて良かった。


「紗和さん。実はお願いがあって今日来ていただいたのよ。」


「お願いですか?」


カチャッ ドアが開いた


「すまない。遅くなって。」


誰でしょう?


「こちら悠文さんの兄の隆文よ。」


おにいさん!?


「こちらが望月 紗和さんよ。」


「は、初めまして。望月 紗和です。

は……藤堂先生にはいつもお世話になってます。」


悠文の話しでは、悠文のお母さんが倒れた時お見舞いにも来なかった冷血な人だって聞いてたけど……。

「僕の顔に何かついてますか?」


やだ、私ったらじっと見ちゃった。

「い、いえ。

あまり藤堂先生に似てないなぁーと思いまして。」


ハッハッハ……。

何いってんだか。


「良く言われます。

あいつは、母親似なんですよ。」

しまった。二人は異母兄弟だったんだ。私のバカ!

「気にしないで下さい。

どうせ悠文から僕のこと聞いてるんでしょう?母親をいじめただの倒れてもお見舞いにも来なかったとか色々と。」


「そんなことは……。」


私って嘘がつけないのよね~。


「もう、隆文さんたら。紗和さんが困ってしまってるじゃない。」


「すまない、すまない。

君の反応が面白くてつい。」


あっ、笑った顔は少し悠文に似てるかも。

それに何かイメージが違うかも。


「あのー、それで私にお願いってなんでしょうか?」


「お食事でもしながらお話ししましょう。」


私は今度はダイニングルームに案内された。

部屋に入ると既に料理が並べられていてどれも美味しそうな物ばかりだった。


「さっ、こちらにどうぞ。」


「失礼します。」
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