恋の治療は腕の中で

マンションに戻ると悠文が心配そうに話しかけてきた。

「どうしたんだ？急に用事ができたからって、何かあったのか？」


まだ何て説得するか悩んでいた私は、

「う、うん。ちょっとね。

それより疲れちゃったからシャワー浴びてくるね。」


その場から逃げるようにリビングをでちゃったけど悠文絶対怪しんでるだろうな。

結局その日は何も話せないまま次の日仕事に行った。



「藤堂先生。患者さんおねがいします。」

私はいつもと変わりなく悠文に告げると


「……。

お願いします。」


あれっ？なんか悠文機嫌悪い？

不思議に思いながらも特に何事もなく午前中の診察は終わった。

お昼休みに瑞季達とスタッフルームでお弁当を食べていると、

「紗和さん。藤堂先生と何かあったんですか？」


「ん？別に何もないけど。何で？」


「うーん。なんかいつもより不機嫌って言うか……。
元々スタッフには愛想振りまく先生じゃないんですけど、今日はいつにも増してクスリともしないんですよ。」


「あ～。私もそれ感じたわ。」

「瑞季さんも。やっぱり、紗和さん自分で気がついてないだけで何かしたんじゃないですか？」


そういわれてもなぁー。


……。

……。

あっ！もしかして。


「何か思い当たることありました？」

「うーん。どうだろう？」


「どっちにしてもこのままはマズイですよ。早く仲直りして下さいね。」




心奈にあんな事言われたおかげで午後の診察はなんだか意識しちゃった。
最後の患者さんが終わると直ぐに悠文が診察室を出ようとしているので私は慌てて悠文を呼びとめる。


「悠文！

あっ、ごめん。仕事中だよね。」

「別に悠文でも構わないよ。

それで何か用？」

うっ、冷たい反応。


「いやー、今日は何が食べたいかなーと思って。」


「紗和の好きにすればいいんじゃない。」


ちょっと何よその言い方。

「そんなこと言わないでさ。

昨日は夕飯作らなかったから今日は悠文の好きなもの作るよ。」


「そうだよな。昨日の夕飯何でか分かんないけど紗和いなかったもんな。」


私のバカ！自分で墓穴掘ってどうすんのよ。


「帰ったらちゃんと話します。」


別に無理に話さなくても良いんじゃない。なんて言ってるけど、悠文顔が笑ってるよ。