恋の治療は腕の中で
「紗和。兄貴と話したぞ。会うのは来週末。

場所は親父の別荘だとさ。」

いつもの優しさはなくどこか他人事のように話す悠文に私は少し罪悪感を覚える。


ごめんね、悠文。でもやっぱりこのまま誤解したままなんて絶対良いわけない。

「うん。分かった。

ありがとう。悠文。」



週末になり私は悠文の車に乗せられて軽井沢にある別荘にきた。

まだ春には少し遠いこの季節所々に雪が積もってる。


「うわー。

素敵な別荘。」


木立に囲まれた別荘は、まるでお伽の国を思わせるようだった。


「悠文は、ここへは来たことあるの?」


悠文は興味なさそうに、

「あ~、あんまり覚えてないけど、小さい頃に親父とお袋に連れられて来たことがあったな。」


この別荘を選んだのは麗香さんだ。

何でもお父さんがとても気に入っているらしく事あるごとに一人で訪れているらしい。隆文さんすら殆どここには来させてもらえないらしい。


私達が車を降りると直ぐ後ろから隆文さん達もやってきた。


私達が会った事があることは悠文には内緒なので、

「初めまして。兄の隆文です。

こちらは、西園寺 麗香さん。」


「初めまして。望月 紗和です。」

「こんにちは。確か悠文さんの病院であったかしら。」

麗香さんはその時に私がいたことなんて覚えてなかったけど、話しのきっかけとしてはナイスだと思う。

「あの時は、ごめんなさいね。

まさか悠文さんにこんな素敵な方がいらしてたなんて知らなかったから。」

私が否定しようとしたら

「麗香、素敵ってお前目が悪いんじゃないのか?」

いやいや、確かに麗香さんに比べたら私なんてチンチクリンだろうけど、何も悠文が言わなくてもいいじゃない。

「悠文、お前仮にも自分のフィアンセに何てことを言うんだ。」


マズイよこの状況。

「あ、あのー。

私なら気にしてませんから。

私、素敵じゃないですから。むしろ田舎者って感じで。」

ハッハッハ


なんて、なんでこうなるのよー。

ちょっと隣で悠文笑い堪えてません。


「そんなことはないだろう。せめて、素朴くらいじゃないか?」


いやいや、そこは深く掘り下げないでくださいよ。


プップップ!

あーもー。笑いたければ笑えばいいじゃない!



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