恋の治療は腕の中で
コンコン♪

「悠文ぼっちゃま。お父様がお着きになりました。」


悠文の表情が急に変わっていった。


「紗和。あいつが何を言っても気にするんじゃないぞ。」

「えっ?うん。」

悠文は私の手を強く握って部屋をでた。


リビングに行くと隆文さん達はすでにソファーに腰かけていた。

私が悠文の隣に腰かけると奥から声がしてきた。


「遅くなってすまない。」

「チッ」

悠文いきなり舌打ちって。

「こ、こんにちは。初めてお目にかかります。望月 紗和と申します。」

私は直立不動で挨拶をして90度にお辞儀をした。

「あ~、君が望月さん。

なかなか元気のあるお嬢さんだね。

私はこの愚息悠文の父で雅文です。」


「はい。

いえ、悠文さんは決して愚息なんかではなくとても優しく思いやりのある方だと私は思います……。」


って、ヤバいいきなり何言ってるのよ私ってば。

「ほー。なかなか気の強い所もあるようですな。

ところで、望月さん。ご両親は何をなさっている方なのかな?」


突然の質問に一気に緊張する。

でも、質問の内容は正直言って最悪だ。お父さんの質問が悪いんじゃなくて、せっかくの家族の団らんに自分が水を指すような話しをしなくちゃいけないことが最悪なのよね。

「おやじ!いきなりそんな事聞いたら失礼だろ。」

「何を言ってる。お前の伴侶となるお嬢さんの両親が何をしてる人なのか聞くのは当たり前じゃないか、もし少しでも病院にとって不利益になるようなご両親ならこの話しはなかったことにしてもらう。」


「俺は紗和と結婚するんだ。紗和の両親とじゃない!」


「い、いいの悠文。

お父さんの言ってることは当然のことだよ。

私は大丈夫だから。

ねっ。」

悠文が落ち着いてきたので私は話し始めた。

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