恋の治療は腕の中で
「私の両親はもういません。

母は私を妊娠すると直ぐに癌が見つかったんですけど治療よりも私を優先したせいで私を産んで直ぐに亡くなりました。

父は男手一つで私を育ててくれましたが8年前に他界しました。

両親の家族とは母が亡くなってから絶縁されたので私には身内と呼べる人は誰もいないんです。」

私は深呼吸してから笑ってお父さんの方を見た。

こんな話ししたら引かれるよね。でもこれは本当の事だし私は両親をとても誇りに思ってる。
もしこのことが悠文との結婚の妨げになるのなら私は諦めるしかない。


「お母さんは何故君を選んだんだろうか?

お父さんを愛していなかったのか?」


「おやじ!いい加減にしろ!

何でそんな事聞くんだ。紗和がどんな気持ちで今まで生きてきたか……。」

私は悠文の手を強く握って、

「私なら大丈夫だよ。

私もずっと同じことを考えていました。私さえ産まれなければお母さんはまだ生きていたかもしれないのに、なんで私なんて産んだのかって。
お父さんはきっと私のこと憎んでるじゃないかとも思いました。

でも違ったんです。


父が亡くなる時、父は私に話してくれました。

自分がどれ程お母さんを愛していたか。そのお母さんが望んだ私を恨むなんてあるわけないって。
私、母にそっくりなんですって。だから父は私を通して母を思い出していたみたいです。私と話すことは母と話をしていることと同じなんですって。
だからお前が責任を感じることはない。母さんのように最後まで笑顔を絶やさないでくれ。って。」

一気に話し終えると悠文が私を抱き締めてくれた。

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