恋の治療は腕の中で
「悠文さん、お父様の気持ちわかっていただけたかしら?」


「少なからず色々と誤解があったことは分かったけどだからといって今まで親父のしてきたことが全て許される訳じゃない。

でも俺は産まれてきても良かったんだよな、親父。」


「当たり前だ、お前は母さんにそっくりなんだから、母さんが私に残してくれたたった1つのものなんだ。」


「ふっ、

もっと早く聞きたかったぜそのセリフ。」


「紗和さん。

お父さんは母親そっくりの君を見てお母さんを思い出していた、と言っていたね。私は悠文を見ていると悠美を思い出すのが辛くて避けていたんだ。

私はなんて愚かだったんだろう。

君のお父さんのような考え方をしていたら悠文に辛い思いをさせなくて済んだのに……。」


「過ぎてしまった時間はもう戻りません。でも未来はいくらでも変えられるじゃないですか。諦める必要なんてないですよ。

ね、悠文。」


「あっ、あ~。」


「紗和さん。

……、ありがとう。」


「そ、そんなぁー。私は別に何も。」



「さあ、さあ。

食事の用意が出来ましたよ。」


多岐さんに言われて皆でダイニングに移った。もちろんその部屋にもピンクと白のダリアが飾られていた。
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