恋の治療は腕の中で
皆が悠文の返事を聞くために一斉に悠文を見ると仕方なさそうに、

「行けばいいんだろ、行けば。」

「何その言い方。

おめでたいことなんだからきちんと返事しなきゃ。」


「わかったよ。

喜んで出席させて頂きます。」


やったー!

私はテーブルの下で小さくガッツポーズをする。


「それからこれは紗和さんの分よ。」

私に?なんだろう。

麗香さんから受け取ったのは白い封筒。不思議そうに封筒の中身を出すとそこには隆文さんと麗香さんのお式の招待状が入っていた。

「わ、私こんなの頂けません。そんな資格ないですよ。」

招待状を閉まって返そうとしたら隆文さんに

「紗和さんさえ良ければ是非出席してほしい。
君のおかげでやっと家族が1つになりそうなんだ。」

困った顔で悠文を見ると

「俺と一緒に行こう。」

「で、でも私が行ったら藤堂家に傷がついてしまいます。」

私は悠文が好きだけど、今回のことで二人の家柄の違いを思い知らされてしまったのだ。
だから悠文が家族とやり直せたなら私は悠文から身を引くつもりでいた。


「何が傷だよ。お前がいることでこの家に傷がつくんなら俺はこの家を捨てるさ。」

「何言ってるの。折角これから家族になろうとしてるのに。」

「お前のいない家族なんて俺には考えられないんだよ。」

ありがとう。本当に嬉しいよ。それだけで私は十分。


「紗和さん。私の言った事で君を傷つけてしまったようだね。

すまなかった。

君は悠文と婚約したんじゃなかったのか?」


「そ、それは、悠文の家がまさかこんなに凄いだなんて知らなかったので。
すみません勝手に婚約なんてしてしまって。」

「何か誤解をしてるようだね。

紗和さんこそ藤堂家いや、悠文に相応しい女性だよ。だから私からも頼む。どうか隆文達の結婚式に出てくれ、そして悠文と結婚してやってくれないか。」


「えっ!?私なんかでいいんですか?」

「バカだなぁー。紗和じゃなきゃダメなんだよ。」

「もちろんだ。」

初めて見るお父さんの笑顔。笑った顔は彼の息子達の笑顔と同じだった。

「ありがとうございます。」

「おめでとう。紗和さん。これで貴女も式に出席してもらえるかしら?」


「はい。喜んで出席させてください。」
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