恋の治療は腕の中で
帰りの車で私は、

「麗香さんのウェディングドレス姿本当に綺麗だったね。

それに隆文さん。終始のろけっぱなしで正直見る目が変わりそう。」


「あ~。

本当だよな。あれがあの冷血兄貴だとは驚きだ。

次は紗和の番だな。」

「う~ん。正直麗香さんの後はやりたくないかも。

それに、ほらっ。お金もかかるし、家族だけでお食事会なんてどう?」


「何いってんだよ。

俺は紗和のドレス姿がみたいんだけど。」


とか言って半笑いになってますけど。





それからは悠文との結婚の準備と海老名歯科での医院長からの引き継ぎと慌ただしく2ヶ月が過ぎていった。





*******************

6月、南の方から梅雨の知らせがくる中今日は晴天。


「失礼します。」


「はい、どうぞ。」


「ご準備の方が整いましたのでこちらへどうぞ。」


私は海老名元医院長と腕を組んで扉の前に立つ。


「紗和ちゃん。綺麗だよ。僕なんかが隣を歩いて本当にいいのかい?」


「医院長の他に誰がいると思ってるんですか。娘だと思ってるって言ってくれたの忘れたんですか?」


「そうだよね。

よし、じゃあ行こっか。」


音楽と共に扉が開かれて私達はバージンロードを歩きだす。

真っ直ぐ伸びた赤い絨毯の先に私の愛する悠文がいる。私は悠文に向かって一歩ずつ近づいていく。


「藤堂先生、後は頼みましたよ。」

医院長はそう言って私の手を悠文の手に重ねた。

「はい、任せて下さい。」

私に居場所をくれた悠文。また人を愛することを教えてくれた悠文。

思い返すと今にも涙が出そうになる。


「こんな所で泣いたら折角の美人が台無しだぞ。」


初めてそんな事を言ってくれた。

「嘘、美人だなんて思ってないくせに。」


私が半分拗ねて半分照れながら言うと。


「本当は初めて紗和に会った時から綺麗な紗和に一目惚れして絶対自分の物にしてやろうって思ってたんだ。」

突然の告白に驚いて悠文の顔をじっと見ていたら、


「ほら、もう神父さんの誓いの言葉が始まるぞ。

なんだ、俺に惚れ直したのか?

もう少し我慢しろ、今夜は紗和を寝かせないから覚悟しとけよ。

俺の奥様。」

「もー、何言ってるの!神様の前で!」


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