恋の治療は腕の中で
おまけ
「あーもー、紗和さんは座ってて下さいよ。後は、私達がやりますから。」
海老名歯科医院からETデンタルクリニックに改名されてから3年が過ぎた。
海老名のEと藤堂のTだ。
海老名元医院長は自分の名前なんて無くして構わないって言ってくれたんだけど、悠文と私が反対して二人の頭文字をつけることにした。
初めの内は電話に出るとき間違えて海老名歯科とか言うこともあったけど、今では私達も患者さんも間違えることはない。
今まで周りに冷たかった悠文も結婚してからスタッフにも優しくなった。
特に患者さんに見せる笑顔は評判を呼び最近ではテレビなんかにも『イケメン歯科医師』とかで取り上げられる始末。
本人は当然だな。なんて相変わらず私には俺様な悠文だけど。
「大丈夫だよ心奈。心配性なんだから。」
「何言ってるんですが、もういつ産まれてもおかしくないってドクターに言われたんですから。」
そう私は今臨月をむかえている。
「瑞季さんからも何か言って下さいよ。」
「あっ、ごめん。聞いてなかった。どうした?」
「あー、瑞季さんは瑞季さんでイチャイチャしないで下さいよ。
ここは職場ですよ。」
何と瑞季はあの中田くんと今ラブラブ中なのだ。
心奈の話しによると、私にフラレてすっかり憔悴しきった彼を見ていられなくなって色々と世話を焼いているうちにお互い好きになっていったらしい。
なんとも瑞季らしい。
「ほらっ、紗和。心奈くんが可哀想じゃないか。俺も心配だし、少しは座ってろよ。」
「医院長だけですよ。私の見方わ。」
「悪い心奈くん。俺はいつでも紗和の見方だから。」
「あーもー!こんな職場辞めてやるー!」
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