恋の治療は腕の中で
「昨日の飲み会で、紗和かなり酔っぱらって、俺に色々質問してきたのは覚えてる?」


「途中までは …… 」


「そっか。」



「紗和は、俺が独身か彼女はいるのかって聞いてきたんだ。」


嘘っ そんなこと私聞いたの!
でも確かに聞いたような。

「いない。って答えたら、
この歳で彼女もいなくて独身なんて、何か欠点でもあるんじゃないですかね。

って言われたよ。」


穴があったら入りたい。


「俺も言われっぱなしはしゃくだから同じようなこと聞いたんだけど。

覚えてない?」


「なんとなくですけど。」


「それを聞いてた医院長が。

それなら相手がいない者同士お二人結婚したらどうですか?

って。

俺にしたら医院長は恩師なわけで、断る理由も特に無いし。なんて話したら、あれよあれよと婚約することに。」


ちょっと、待った!

普通いきなり結婚にはならないんじゃない。お付き合いしたらとかお食事でもしたらとか……。

そしてそこに私の意見は?

「何を勝手に。」


「はあー、勝手にじゃないよ。

紗和もOKしたんだよ。」

いつ?どうして?どうなってそうなるわけ?


「嘘ですよね?」


はあー 悠文はため息をつくと

「残念ながら嘘じゃないよ。

今証拠を見せてあげる。」


そう言って携帯を持ってきて私に見せた。

それは、皆で写っている昨日の飲み会の写真だ。

よく見ると、悠文と満面の笑みの私の手には1枚の紙が握られている。

スクロールしてみると

なんとそこには


『婚約おめでとう』



の文字が!



「これで、信じてくれた?」



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